フランスの競争当局が、米グーグルに2億5000万ユーロ(約410億円)の制裁金を科すと発表した。これは、何に対しての制裁金なのかを探ってみよう。
グーグルへの制裁金の報道
フランス競争当局は20日、報道機関や出版社と記事使用料をめぐる適切な交渉を行わなかったとして、米グーグルに2億5千万ユーロ(約410億円)の制裁金を科すと発表した。
発表によると、仏競争当局は2020年、著作権に関する欧州連合(EU)の指令にもとづく複数の報道機関からの訴えを受け、グーグルに「誠意ある交渉」に応じるように命令した。しかし、21年にはグーグルが命令に従わなかったとして、5億ユーロ(約820億円)の制裁金を科した。
生成AIが文章を作成する仕組み
生成AIとは?
生成AI(Generative AI) は、オリジナルの画像、動画、テキスト、音声など、さまざまな形式のデータを自動的に生成する技術です。
生成AIの基本的な仕組み
生成AIは、ディープラーニング(深層学習)という技術を活用しています。
ディープラーニングは、膨大なデータから特有の傾向を抽出し、パターンや解決策を蓄積していくためのものです。
人間が新しいことを学ぶ際に情報を得て全体の傾向を認識するプロセスと似ています。
例えば、テキスト生成AIの場合は、さまざまな文章をAIにインプットし、単語の意味やほかの単語とのつながりを認識させます。こうしたディープラーニングを繰り返すことで、AIは自身で新たなテキストや画像を生成できるようになります。AIは学習を続けるため、精度は使えば使うほど向上していきます。
主な生成AIの種類と実現できること
- 画像生成AI:
ユーザーの指示に応じて画像を生成できます。
例えば、「北欧の森のような風景画像」や「昼寝している子猫の画像」といったテキスト形式で指示することで、画像AIがイメージに合う画像を自動的に生成します。 - 動画生成AI:
画像生成AIの発展形で、テキストで指示することでイメージに近い動画が生成できます。
例えば「京都の街並み」と指定すれば、AIが蓄積されている情報をもとに、京都の雰囲気に近い動画を生成します。 - テキスト生成AI:
ユーザーが入力した質問や指示に対して回答したり、テキストコンテンツを生成したりします。
例えば、ChatGPTやGeminiといったテキスト生成AIは、高度な用途での活用範囲も広がっています。 - 音声生成AI:
音声やテキストによる指示で新たな音声を生成します。ナレーション作成やアバターへの音声追加などに便利です。
フランスが制裁金を命ずる理由
2019年に欧州連合(EU)は著作権指令を改正し、報道機関の記事を使用した際に対価を支払うよう巨大IT企業に義務づけました。
この指令はDirective (EU) 2019/790として知られており、デジタル単一市場における著作権と関連権について規定しています1。
具体的には、報道機関の記事を使用する巨大IT企業は、契約で合意された対価が不合理に低い場合、その後の収入に対して適切で公正な追加対価を請求する権利を持っています。
対価の具体的な金額は指令に直接規定されていないため、企業ごとに異なります。しかし、報道機関の記事を使用する際には、公正な対価を支払うことが求められています。
EU指令 Directive (EU) 2019/790
Directive (EU) 2019/790は、欧州連合 (EU) 加盟国に対する 著作権指令 の一つです。
この指令は、デジタル化や国際化の社会変化に対応して、著作物利用の例外規定を拡充し、著作者や実演家への公正な報酬の保障を通じたデジタル著作権市場の健全化を目的としています。
具体的には、DSM著作権指令は以下の3つの目的を持っています。
- 制限・例外規定の拡充:
デジタル環境や国境を越えた状況に合わせて、著作権の制限と例外規定を適切に調整します。 - ライセンス許諾の改善:
著作物の利用に係るライセンス許諾の慣行を改善し、著作物に利用者がアクセスしやすい環境を整備します。 - 著作権市場の健全化:
著作権者への公正な報酬の支払いを通じて、著作権市場を健全にします。
この指令は2019年6月7日に発効し、EU加盟国は2021年6月7日までに国内法化して履行する義務を負っています。
なお、DSM著作権指令は「リンク税」と呼ばれる第15条と「アップロード・フィルター条項」と批判された第17条の2点で物議を醸し、激しい対立を生み出したことでも知られています。
まとめ
EU圏内では、このEU指令が有効となりますが、EU未加盟国では適用されないことになります。今後、グーグル以外の他の企業に対しても制裁金が命じられるかもしれません。動向を注目していきましょう。