失われた30年と言われ、日本の賃金は四半世紀横ばいとなっている。最近の物価上昇、増税など対して賃金の上昇が実感されない消費者にとって死活問題である。
実は、賃金は下がっているのに公表される数値は横ばいの錯覚なのかもしれない。
過去、海外の状況を学び、賃金の変化について考えてみましょう。
日本の賃金推移
日本の賃金推移を見ましょう。
- 20年前(2004年):
2004年の平均賃金は、約44万円でした。
この時期は、経済成長が続いており、企業の利益も増加していました。 - 10年前(2014年):
2014年の平均賃金は、約42万円でした。
この時期は、リーマンショック1後の景気回復期であり、一部の業界では賃金が上昇していましたが、全体的には横ばいでした。 - 現在(2022年):
2022年の平均賃金は、約44万円です。
最近の実質賃金の上昇率は限定的であり、日本の労働者は給与の増加を実感していない状況です。
これらわかるように、日本の賃金は過去、四半世紀で大きく変動していません。
経済状況や産業の変化によって影響を受けますが、全体的には上昇傾向が続いていないことが分かります。
海外の賃金推移
海外の主な国の賃金推移を見ましょう。
アメリカ
- 20年前(2004年):
2004年の平均賃金は、約4万ドルでした。
この時期は、アメリカ経済が堅調で、一部の職種では高い賃金が支払われていました。 - 10年前(2014年):
2014年の平均賃金は、約4.5万ドルでした。
リーマンショック後の景気回復期であり、賃金は緩やかに上昇していました。 - 現在(2022年):
2022年の平均賃金は、約5.5万ドルです。
コロナ禍による影響を受けつつも、アメリカの賃金は上昇傾向にあります。
ドイツ
- 20年前(2004年):
2004年の平均賃金は、約3.5万ユーロでした。
ドイツは経済的に安定しており、高い生活水準を維持していました。 - 10年前(2014年):
2014年の平均賃金は、約4万ユーロでした。
ドイツ経済は好調で、賃金も上昇していました。 - 現在(2022年):
2022年の平均賃金は、約4.5万ユーロです。ドイツは労働者の権利を重視し、高い賃金水準を維持しています。
イタリア
- 20年前(2004年):
2004年の平均賃金は、約2.5万ユーロでした。
イタリアは経済的に苦境に立たされており、賃金の上昇は限定的でした。 - 10年前(2014年):
2014年の平均賃金は、約2.7万ユーロでした。
経済的な課題が続いていましたが、一部の業界では賃金が改善されていました。 - 現在(2022年):
2022年の平均賃金は、約2.8万ユーロです。
イタリアは経済的な課題に直面しており、賃金の上昇は限定的です。
イギリス
- 20年前(2004年):
2004年の平均賃金は、約2.5万ポンドでした。
イギリスは経済的に安定しており、高い生活水準を享受していました。 - 10年前(2014年):
2014年の平均賃金は、約2.8万ポンドでした。
リーマンショック後の景気回復期であり、賃金は緩やかに上昇していました。 - 現在(2022年):
2022年の平均賃金は、約3.2万ポンドです。
イギリスはブレグジット2などの影響を受けていますが、賃金は上昇傾向にあります。
中国
- 20年前(2004年):
2004年の平均賃金は、約1.5万人民元でした。
この時期は、中国経済が急速に成長しており、一部の都市では高い賃金が支払われていました。 - 10年前(2014年):
2014年の平均賃金は、約3万人民元でした。
中国の経済成長が続いており、賃金も上昇していました。 - 現在(2022年):2022年の平均賃金は、約5万人民元です。
中国は世界最大の経済大国となり、賃金水準も向上しています。
日本の賃金が上昇しなかった要因
日本の賃金が、この四半世紀に大きく上昇してこなかった要因です。
これらの要因が、複合的に組み合わさった背景があります。
非正規労働者の増加:
1989年以降、非正規労働者の割合が増加しました。
(1995年には17%だった非正規雇用者の比率は2020年には35%にまで高まっている。)
労働生産性の横ばい:
日本の労働生産性3は、ほぼ横ばい状態が長く続いています。
長時間労働や年功序列による賃金設定、中小企業の生産性向上の難しさなどが要因です。
労働組合の組織率の低下
労働組合の組織率が減少しており、組合員が高齢化しています。
これにより労働者の賃上げを主張する力が弱まりました。
日本経済の長期低迷
企業が十分な利益を上げていないことが賃上げにマイナスの影響を与えています。
特に中小企業は価格転嫁を躊躇し、賃金の上昇が制限されています。
日本の賃金が上がる要素はないか
日本の賃金が今後上昇するかどうかは複雑な問題ですが、いくつかの要因を考えます。
- 経済状況:
日本の経済成長が持続的に回復することが賃金上昇の鍵です。
景気が良くなれば、企業は利益を上げやすくなり、賃金の引き上げが可能になります。 - 労働市場の変化:
労働力不足が続いているため、企業は人材確保のために賃金を引き上げる必要があります。
特に高度なスキルを持つ労働者の需要が高まっています。 - 政府の政策:
政府は賃金の引き上げを促進するために法的規制や助成金を導入することがあります。
これにより、賃金が上昇する可能性があります。 - 労働組合の活動:
労働組合が賃金交渉に積極的に関与することで、労働者の賃上げを推進できる可能性があります。
ただし、これらの要因は相互に影響し合い、状況によって異なります。将来の日本の賃金の動向は予測が難しく、多くの要因が絡み合っています。
これらの要素を複合的に噛み合うことができれば、賃金上昇は考えられます。
賃金上昇への政府の政策
政府の政策について、概要に少しふれましょう。
詳しくはWebなどで確認し、これらの有効活用も効果的かと思います。
- 個人のリスキリング(学び直し)の支援:
大学や専門学校と企業が連携して、必要なスキルを身につけるためのプログラムを提供します。
産業界のニーズに合わせたカリキュラムを開発し、労働者が最新の知識とスキルを習得できるようにします。 - 労働者の再教育プログラム:
転職やキャリアチェンジを考えている労働者に対して、再教育プログラムを提供します。
これにより、新しい分野での雇用機会を広げることができます。 - 日本型職務給の確立:
職務ごとに適切な報酬を設定するために、職務評価制度を導入します。
これにより、同じ職務を担当する労働者が公平な報酬を受け取れるようになります。 - 年功序列の見直し:
単なる勤続年数ではなく、スキルや成果に基づいて賃金を決定する仕組みを構築します。 - 成長分野への雇用の円滑な移動を可能にする環境整備:
労働者と求職者をつなぐプラットフォームを整備します。
これにより、労働者は自身のスキルと興味に合った仕事を見つけやすくなります。 - キャリアカウンセリングの強化:
労働者に対してキャリアアドバイスを提供し、適切な職業選択をサポートします。 - 労働者のスキル向上のための支援:
労働者が必要なスキルを習得できるようトレーニングプログラムを提供します。
特にデジタルスキルや英語力の向上を重視します。 - 労働者のスキルアップを奨励する助成金制度:
スキル向上に積極的な労働者に対して、助成金を支給します。
まとめー労働生産性と非正規雇用率ー
賃金の推移、労働生産性のようにある数式から導き出した結果の値は、見る角度でその結果が変わります。
現状を何も変えずに賃金上昇は不可能であり、単純な賃上げのみでは継続困難なことは予想できます。
当然ですが、非正規雇用率に対する政策、労働生産性の向上を変革することが必要です。
政府に期待をしたところですが、私たちは、これらを意識しつつ、個人でできる事を考えながら日々の暮らしを楽しいものにしていきたいです。