米上院は4月23日に、短編動画投稿アプリ「ティックトック(TikTok)」の中国の親会社である字節跳動(バイトダンス)に約9カ月以内に同アプリの米資産売却を義務付け、従わなければアプリの利用を禁止する法案を可決した。(TikTok禁止法案)
TikTokの使用に関して、世界各国の動きを知り、日本はどうしていく動きかを分かりやすく短く解説をします。
米上院が可決した「TikTok禁止法案」の概要
2024年4月24日、アメリカ上院は、中国のByteDance社が運営する短尺動画アプリ「TikTok」を売却するよう求める法案を79対18の賛成多数で可決しました。
この法案は、以下の概要です。
- ByteDanceは、1年以内にTikTokのアメリカ事業を非中国系の企業に売却する必要がある。
- 売却先企業は、アメリカ政府の審査を受けなければならない。
- 売却後も、TikTokはアメリカ政府の国家安全保障上の懸念を解消するための措置を講じる必要がある。
アメリカは、なぜ禁止にするのか
アメリカが、TikTokを禁止にする主な理由です。
国家安全保障上の懸念:
- FBI長官は、TikTokについて「明白な国家安全保障上の懸念」があると述べています。
- 中国政府がTikTokを通じて膨大なアメリカ国民の情報を収集・管理し、世論操作を行う可能性があると指摘されています。
- 米連邦政府職員の公用端末でのTikTok使用が禁止され、米下院外交委員会もアメリカ国内でのTikTok利用を全面禁止する法案を可決しました。
データの収集と分析:
- 匿名の元TikTok従業員からの情報によれば、中国のByteDance(バイトダンス)(TikTokの親会社)の従業員は中国とアメリカのデータへのアクセスを簡単に切り替えられ、他国のユーザーのデータを定期的にバックアップし、収集・分析しているとされています。
他国の対応:
- 欧州連合(EU)やカナダでも政府職員の公用端末でのTikTok使用が禁止されており、日本でも公用端末でのTikTok利用が禁止されています。
世界各国の動き
EUの動き
欧州委員会は、公式のデバイスでのTikTok使用を禁止しました。
以下は、EUでのTikTok使用禁止に関連する詳細です:
決定の背景:
欧州委員会は、公式のデバイスでのTikTok使用を禁止しました。
この決定は、EUの公式アプリがインストールされた公式のデバイス(電話を含む)での中国企業が所有するビデオ共有アプリの使用を防ぐためです。
TikTokは、親会社であるByteDanceが北京に拠点を置いており、欧州のユーザーのデータを違法に中国に送信しているとして、欧州の主要なプライバシー規制当局によって調査されています。
欧州委員会の対応:
TikTokのアルゴリズムは、EUのデジタルサービス法に準拠するためにユーザーにオプションとして提供されています。
13歳から17歳までのユーザー向けのターゲット広告を禁止する法律に同意しています。
EUのユーザーは、違法と考えるコンテンツを報告するための新しいオプションを利用できるようになりました。
議論と混乱:
欧州の政治家は、この禁止の影響に対処する際に遅れを取っています。
欧州委員会内でも、決定の背後にある詳細については不明確であり、議論が続いています。
一部の国では、TikTokの公式アカウントを運営している政府機関の職員が、アプリを公式の目的で使用していないことが明らかになっています。
その他各国の動き
- アフガニスタン:
2022年にTikTokとゲームのPUBGが「若者を誤導から守るため」という理由で禁止されました。
ゲームのPUBGとは:
『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS(プレイヤーアンノウンズバトルグラウンズ)』の略称。 最大100人のプレイヤーが無人島で生き残りをかけて戦うバトルロワイヤルゲーム - オーストラリア:
連邦政府が発行したデバイスでのTikTok使用が禁止されています。
国の情報機関からの助言を受けて、司法長官のMark Dreyfus氏がこの決定を下しました。 - ベルギー:
連邦政府が所有または支払ったデバイスでのTikTokの一時的な使用禁止が行われています。
サイバーセキュリティ、プライバシー、誤情報に対する懸念が理由です。
首相のAlexander de Croo氏は、国の国家安全保障機関とサイバーセキュリティセンターからの警告に基づいて、6か月間の禁止を実施しました。 - カナダ:
政府発行のデバイスでのTikTok使用が「受け入れられない」プライバシーとセキュリティのリスクを示すものとして禁止されています。
従業員は今後アプリをダウンロードできなくなります。 - デンマーク:
国防省は、従業員が職場の電話にTikTokを持つことを禁止し、既にインストールしているスタッフはできるだけ早くデバイスからアプリを削除するよう指示しています。
さらに、欧州議会、欧州委員会、EU評議会の3つの主要機関は、スタッフのデバイスでのTikTok使用を禁止しています。
欧州議会の禁止により、議員とスタッフは個人のデバイスからもTikTokアプリを削除するようアドバイスされています。
これらの国々は、プライバシーとセキュリティへの懸念を考慮して、TikTokに対して慎重な姿勢を取っています。
日本の動き
TikTokは日本国内で広く利用されています。
しかし、その利用についてはいくつかの懸念があります。
- TikTokが日本で使えなくなる予定はない:
日本国内でのTikTokの利用が禁止される予定は当分ありません。 - TikTokが危険視される理由:
TikTokは運営会社であるByteDanceの利用者情報の扱いに関して不透明さがあります。
中国政府が制定する「国家情報法」に基づいて、利用者の個人情報を不適切に収集し、本国に送信していると疑われています。
中国政府が一党独裁体制であることから、情報の取り扱いが不透明であり、獲得した情報の利用目的が分からないことが問題とされています。 - 日本政府の対応:
政府職員が利用する公用端末のうち、機密情報を扱う機器を対象にTikTokの利用を禁止しています。
一般の利用者については、TikTokの利用が禁止されているわけではありませんが、個人情報の取り扱いには注意が必要です。
日本ではTikTokの利用が続いていますが、個人情報の保護やセキュリティについては引き続き注意が必要です。
TikTokの創設
TikTokを運営するByteDance社の創設者は、中国の起業家である張一鳴氏(ちょう・いちめい)です。
張氏は1983年生まれ。北京大学でソフトウェア工学を専攻し、卒業後はマイクロソフトや百度などでエンジニアとして勤務しました。
2012年、張氏はByteDance社を設立し、今日頭条(Toutiao)というニュースアプリを開発しました。今日頭条は、人工知能(AI)を用いてユーザーの興味に合わせた記事を配信するアルゴリズムが特徴で、中国で爆発的な人気を博しました。
ByteDance社はその後、Douyin(抖音)やTikTokなどの短尺動画アプリを開発し、世界中の人々に利用されています。
まとめ
今後、日本においても規制の対象になる可能性は十分にあります。理由は、諸外国の考えや動きと同様の方向性ではないでしょうか。
そのうえで、セキュリティなどのリスクを認識したうえで、これからも使用していくでしょう。
しかし、競合のSNSは、これからも多く出てくるでしょうから 何が生き残っていくのかも面白いところですね。