2025年1月の毎日新聞世論調査で、選択的夫婦別姓制度を導入することの賛成/反対の調査の結果「賛成」は42%で、「反対」は23%。「どちらとも言えない」は34% の発表があった。
ここで、改めて 選択的夫婦別姓とはどのような制度なのか。そして その関連する事例などをまじえ解説します。
注意:この記事の記載内容は、既に公になっている事柄を分かりやすく解説をしていますので参考としていただき 法的な内容など確実なことについては法律家などの専門の方への相談、問合せを行うことをお勧めします。
選択的夫婦別姓とは?
選択的夫婦別姓制度は、結婚した夫婦が同じ名字(姓)を名乗るか、それぞれの名字を名乗るかを選べる制度です。
現在の日本では、結婚すると夫婦が同じ名字を名乗ることが法律で義務付けられていますが、この制度が導入されると、別姓を選択しても法律上の夫婦として認められることができます。
例>どのようなケースで制度を使うことができるか
選択的夫婦別姓の制度をどのような場面で使えるのかの例を紹介します。
この他にも、多くの使用用途がありますが、主なもののみとなります。
仕事上の名前を変えたくない場合
以下の例では、既に社会では行われていますが、法的な効力はなく あくまで運用上で対応を現在はされています。
- 弁護士や医師など、名前がそのまま「ブランド」になる職業
→ 既に旧姓で顧客や患者から認知されている場合、結婚しても名前を変える必要はなくなります。 - 会社員として旧姓でキャリアを築いている場合
→ 名字を変えると職場での混乱が生じる可能性があるが、別姓を選べば旧姓を継続して使用可能となります。
家族の名字を継ぎたい場合
- 両方が家業を継ぐ場合
→ 夫が「鈴木家」を、妻が「田中家」をそれぞれ継ぐ必要がある場合、名字を変えずに夫婦でいることが可能となります。 - 実家の名字を守りたい場合
→ 結婚後も親の名字を継ぎたい場合に対応ができるようになります。
国際結婚の場合
- 外国人の配偶者が自分の名字を変えたくない場合
→ 外国人の文化や法律で名字を変えることが一般的でないケースがあり、それに対応が可能となります。
性別平等を重視する夫婦の場合
- 「夫の姓に変えるのが当然」という社会的な慣習に違和感を持ち、夫婦が平等な立場で結婚生活を送りたい場合に対応をすることができます。
離婚後に旧姓に戻すリスクを避けたい場合
- 再婚する際に「姓をまた変更するのは面倒」という人が、最初から自分の名字を維持する選択肢を持てる。(再婚が前提の考えですので、リスクとして考えましょう)
主な海外諸国の夫婦別姓に関する制度
多くの国では、結婚後も夫婦がそれぞれの姓を維持することが認められ、名字をどうするかは夫婦の自由に委ねられています。
以下は主な海外諸国の状況です。
アメリカ
- 夫婦が別姓を名乗ることが一般的で、名字を変更するかどうかは個人の自由です。
- 結婚後に夫婦が同じ姓を名乗る場合でも、必ずしも法律で求められるわけではありません。
イギリス
- 結婚後の名字に関して法的な規定はなく、夫婦は自由に選択が可能です。
- 女性が伝統的に夫の姓を名乗ることが多いようですが、近年は別姓やダブルバレルネーム(両方の姓をハイフンで繋ぐ)が増加しているようです。
フランス
- 結婚後も法律上の名字(「出生時の名字」)は変更されません。
- 社会的な通称として、配偶者の姓を使用することが可能ですが、義務ではありません。
ドイツ
- 夫婦は以下の選択肢から名字を決めます:
- 夫の姓を家族の姓とする
- 妻の姓を家族の姓とする
- 両者がそれぞれの名字を保持する(別姓)
- 子どもの名字は夫婦が話し合いで決めるとのことです。
中国
- 結婚後も夫婦がそれぞれの名字を保持するのが基本です。
- 姓を変更する文化がないため、結婚後も男女ともに自分の名字を名乗ります。
韓国
- 韓国でも法律上、結婚後も夫婦がそれぞれの姓を名のります。
- ただし、子どもの姓は通常、父親の姓を引き継ぐのが慣例のようです。
台湾
- 結婚後も夫婦がそれぞれの姓を維持することが一般的です。
- 配偶者の姓を使用することも可能ですが、義務ではありません。
スウェーデン/ノルウェー/フィンランド
- 結婚後もそれぞれの姓を保持するか、片方の姓を選択するかは夫婦の自由です。
- 夫婦で新たな名字を作る(合成姓)ことも可能です。
国際的な傾向
海外諸国の傾向について、まとめると以下となります。
- 夫婦別姓が主流:中国、韓国、北欧諸国など。
- 選択制の国が多い:アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスなど。
- 夫婦同姓が義務付けられている国は少ない:日本は数少ない例外で、国際的には「夫婦別姓を認めるのが一般的」とされています。
選択的夫婦別姓制度に反対する主な意見
選択的夫婦別姓制度に反対する人たちは、主に以下の観点から反対の意見を持っています。
家族の一体感が失われる
- 主張:「同じ名字を名乗ることで、家族としての一体感や絆が深まる」という考え方がある。
- 懸念:夫婦や子どもが別々の名字を持つことで「家族のまとまり」が薄れるのではないかという意見。
- 例:「名字が異なると家族として見られない場面が出てくるかもしれない」という不安。
日本の伝統や文化を損なう
- 主張:「夫婦同姓」は日本の伝統的な家族制度や文化の一部であり、それを崩すべきではない。
- 懸念:特に年配層や保守的な立場の人々から、「伝統を守るべきだ」という声が多い。
- 例:「古くからの家制度や『家族=一つの姓』という考え方が失われる」との意見。
子どもの名字に関する問題
- 主張:夫婦が別姓を名乗る場合、子どもの姓をどちらにするかでトラブルが生じる可能性がある。
- 懸念:子どもが「どちらかの姓を選ばなければならない」ことで、家族間の不公平感や葛藤が生まれるかもしれない。
- 例:「兄弟で名字が違う場合、学校や社会で混乱するのではないか」という懸念。
制度運用の複雑化
- 主張:夫婦別姓を認めると、行政手続きや戸籍制度が複雑になり、混乱を招く可能性がある。
- 懸念:役所や企業の書類、システムの変更が必要になり、コストや手間が増える。
- 例:「戸籍制度の改修が大規模になり、税金負担が増えるのではないか」との懸念。
別姓が実質的に強制される可能性
- 主張:「選択制」とされているが、社会的なプレッシャーや職場の風潮で、実質的に別姓が強制される可能性がある。
- 懸念:「本当は同姓を望んでいても、周囲に合わせて別姓を選ばざるを得ない」という状況が起こり得る。
- 例:「女性が別姓を選ぶことを社会的に期待されるようになるのでは」という不安。
社会の分断を懸念
- 主張:選択的夫婦別姓を導入することで、賛否が分かれ、社会的な対立を深める可能性がある。
- 懸念:特に保守的な立場の人々から「家族制度の根本が揺らぐ」という批判が強くなることを懸念。
- 例:「若者と高齢者の間で価値観のギャップが拡大する」との意見。
別姓制度が必須ではないと考える人の意見
- 主張:現行制度でも、通称や旧姓の使用で対応可能であり、わざわざ法改正する必要はないという意見。
- 懸念:「選択的夫婦別姓がなくても現実的に問題なく生活できる」と考える人々からの反発。
- 例:「旧姓使用が認められているのだから、現行制度で十分ではないか」という主張。
まとめ
反対意見の多くは、「家族の絆」「伝統の維持」といった価値観や、「運用の複雑化」への懸念に基づいています。
一方で、賛成派からは「選択の自由を尊重すべき」という反論もあり、議論は平行線をたどることが多いです。
導入には、社会全体での十分な議論と、運用面での具体的なルールづくりが求められるでしょう。