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次の5G=6G?NTTが挑むIOWN構想 ― 光電融合・光通信が変える未来

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はじめに ― 「5Gの次」はどこへ向かうのか

2020年代前半に商用化された第5世代移動通信(5G)は、スマートフォンやIoTデバイスの活用を大きく変革し、私たちの生活や産業に新たな可能性をもたらしました。現在、世界の技術競争は次なるステージ「6G」へと移行しつつあります。

その中で、国内外から注目を集めているのが、NTTが主導する「IOWN構想(Innovative Optical and Wireless Network)」です。

IOWNは単なる次世代通信規格ではなく、従来の「電気」中心のコンピューティングから、「光」を基盤とした情報処理・通信へと転換する、未来の社会インフラを目指す構想です。

このコラムでは、IOWN構想が実現した世界を想像し、産業の変化を探ります。

IOWN構想の概要 ― 光が拓く「ポスト5G」時代の基盤

IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)とは、「光電融合デバイス」「オールフォトニクス・ネットワーク」「デジタルツインコンピューティング」の3つを柱とする、次世代の通信基盤構想です。

簡潔に言えば、従来は電子回路(電気)によって処理されていた通信・演算・伝送のすべてを「光」に置き換えることで、超低遅延・低消費電力・大容量通信の実現を目指しています。

この構想はNTTが主導するものですが、日本国内にとどまらず、Intel、Sony、NVIDIA、Ciscoなどの海外企業もフォーラムに参加しており、グローバルな技術連合として展開されています。

●参考資料:

私たちの暮らしがどう変わるのか ― 光電融合がもたらす日常の変化

(1)通信が「感じない」ほど速くなる

IOWNによって実現される通信は、遅延(レイテンシ)が現在の100分の1以下になるとされています。

これにより、動画の読み込みはもちろん、遠隔手術や自動運転の制御においても「遅れ」を感じることがなくなります。

  • 医師が遠隔地からリアルタイムで手術を実施
  • 自動運転車が都市全体で協調しながら安全に走行
  • VR会議が現実と見分けがつかないほど滑らかに展開

(2)“デジタルツイン都市”の誕生

IOWN構想の柱のひとつである「デジタルツインコンピューティング」は、現実の都市・人・インフラをデジタル空間に再現し、AIによって最適化する技術です。

たとえば、都市の交通・防災・エネルギーなどのデータがリアルタイムで連携することで、「未来予測型の都市運営」が可能になります。

東京や大阪などの大都市では、建物や道路の構造情報が常時シミュレーションされ、災害時には「どこへ避難すべきか」を即座に提示する仕組みも現実味を帯びてきます。

(3)リモート社会が“実体を伴う”世界に進化

5Gによってオンライン会議やリモートワークが一般化しましたが、IOWNではそれがさらに進化し、まるで同じ空間にいるかのような体験が可能になります。

8K・16Kクラスの高精細な立体映像に加え、触覚や音響のリアルタイム伝送が実現すれば、教育・医療・観光のあり方も大きく変わるでしょう。

  • 学生は自宅にいながら“実験室の中”で学習
  • 患者はどこにいても専門医の診察を受けられる
  • 音楽ライブが、光通信によって「現場そのまま」に届く

IOWNを支える技術と産業構造の変化

IOWNの実現により、産業構造にも大きな変化が訪れると予想されます。
今後は「発展が期待される分野」と「縮小が見込まれる分野」が明確に分かれていくでしょう。

(1)発展する分野

分野内容発展理由
光電融合デバイス光と電気を相互に変換するチップやモジュール通信装置やデータセンターの低消費電力化に不可欠
フォトニクス集積回路(PIC)光による演算やスイッチングを行う回路技術次世代AIやクラウド演算の高速処理に必要
光ファイバー・光通信網光信号を都市や家庭まで届けるインフラIOWNの物理的な通信基盤として重要
デジタルツイン・シミュレーション都市やインフラを仮想空間で再現・分析防災やスマートシティの高度化に貢献
AI×通信制御AIによる光ネットワークの自動制御技術ネットワークの最適化と自律運用の中核技術

(2)縮小が予想される分野

分野内容縮小理由
電気信号ベースの通信チップ従来の電子伝送に用いられるチップ光通信への移行により役割が限定的に
高消費電力型サーバー電力効率の低い設計のサーバー脱炭素・省エネ志向により需要が減少
従来型ルーター・スイッチ電子制御中心のネットワーク機器光スイッチング技術への転換が進行中
既存モバイル通信基地局電波中心の通信インフラ光と無線の融合型ネットワークに置き換えられる可能性

これらの変化は、通信業界にとどまらず、半導体、材料、光学、AI、エネルギーなどの関連分野にも波及すると考えられます。

未来社会へのストーリー ― 光通信がつなぐ新しい日常

2035年頃、もしIOWN構想が本格的に社会実装されていたら、私たちの暮らしはどのように変化しているでしょうか。“少し先の日本の未来”を、IOWNがもたらす日常の変化として描いてみましょう。

シーン①:医療の境界がなくなる

  • 地方の診療所にいながら、東京の専門医と同時に診察を受ける。
  • CT画像は遅延ゼロで共有され、手術ロボットは光通信によって精密に制御される。
  • もはや「遠隔医療」という言葉すら不要になるほど、医療の距離は消えていく。

シーン②:教育が“没入”する

  • 学生はARグラスを通じて、バーチャル実験室で学習。
  • 地球の反対側にいる教授がリアルタイムで講義を行い、資料は3Dモデルとして手元に表示される。
  • 教育格差は「地域の差」から「接続の差」へと変わり、学びの機会が世界中に広がる。

シーン③:交通が都市ごとつながる

  • 自動運転車は、単体で判断するのではなく、都市インフラ・他の車両・歩行者のデータをリアルタイムで共有。
  • 都市全体が一つの“交通ネットワーク”として機能し、「事故ゼロ」を目指す社会運営が技術的に可能となる。

シーン④:働く場所が自由になる

  • 物理的なオフィスが不要になる企業も登場。
  • 3D会議、AIによる作業支援、即時翻訳が日常化し、人とデータ、場所と時間が「光で結ばれる」世界が広がる。

まとめ

本記事で描いたのは、IOWN構想を軸とした一つの未来像です。

現実には、技術的な課題、国際標準化の壁、コスト、社会的受容など、乗り越えるべきハードルが数多く存在します。

もしNTTや国内企業がこの構想を粘り強く推進し、世界標準をリードすることができれば日本発の通信インフラが、再び世界を動かす日が訪れるかもしれません。

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