2026年1月20日、日本の製造業を象徴する企業の一つであるソニーグループから、衝撃的なニュースが発表されました。
長年、同社の顔であったテレビ事業(BRAVIA)を分離し、中国の家電大手TCLエレクトロニクスと合弁会社を設立するというものです。
「あのソニーがテレビをやめてしまうのか」
「なぜ、あえて中国企業と組むのか」
この決断の背景には、現代のビジネスパーソンが避けて通れない「持たざる経営」と「知財ビジネス」への大きなシフトが隠れています。
ソニーから消えたブランドたち:売却と変革の歴史

ソニーはこれまでも、時代の変化に合わせて多くの「完成品ブランド」を整理してきました。
以下のリストを見ると、同社がいかに「ハードウェア単体での利益」から脱却してきたかがわかります。
◆ソニー主要ブランドの変遷リスト
| 譲渡・変革年度 | ブランド・事業 | 内容 | 譲渡先・現状 |
| 2014年 | VAIO(バイオ) | ノートPC | 日本産業パートナーズ(JIP)へ売却 |
| 2017年 | 電池事業 | リチウムイオン電池 | 村田製作所へ売却 |
| 2017年 | AIWA(アイワ) | 音響・映像機器 | 十和田オーディオへ商標権譲渡 |
| 2027年4月(予定) | BRAVIA(ブラビア) | テレビ・ホームオーディオ | TCLとの合弁会社(TCL 51%出資) |
これらに共通するのは、「コモディティ化(価格競争の激化)」との決別です。
かつては独自技術で差別化できた製品も、技術が一般化し、規模の経済が支配する市場になると、ハードウェア単体で利益を出すことは難しくなります。
ソニーはそこで「自社での所有」にこだわらず、次のステージへと舵を切ってきました。
なぜ今、テレビ(BRAVIA)なのか?
かつてのソニーにとって、テレビは事業の中心でした。
しかし現在のテレビ市場は、パネルを自社生産し、世界規模で大量供給できる「垂直統合型メーカー」(韓国・中国勢)が圧倒的なコスト優位性を持っています。
自社でパネル工場を持たないソニーは、独自の高画質エンジンで付加価値を付ける戦略を続けてきましたが、近年はその差別化にも限界が見え始めていました。
2024年時点で、ソニーの世界シェアは約2.3%まで低下。
利益を確保するためには、「製造・物流」という重いコストを切り離す必要があったのです。
なぜパートナーは「TCL」だったのか?
今回の提携相手であるTCLは、世界シェア2位(約14%)を誇り、傘下には巨大パネルメーカー「CSOT」を抱えています。
◆ソニーの狙い
- 画質エンジン(=脳)とブランドは維持
- TCLの圧倒的な生産力(=体)を活用
- 製造リスクを排除し、利益構造を軽くする
◆TCLの狙い
- ソニーの「プレミアムブランド力」を獲得
- 高度な画像処理技術を吸収
- サムスン・LGに対抗できる技術力を強化
まさに「脳と体の交換」とも言える戦略的パートナーシップです。
2027年4月から始まる新会社はTCLが51%を握りますが、製品には「SONY」ロゴが残り、品質基準はソニーが監修します。
ビジネスパーソンが学ぶべき「ソニーの引き際」

このニュースを「日本企業の敗北」と捉えるのは早計です。
むしろ、ビジネスの最前線にいる私たちに「選択と集中」の本質を示しています。
- 「何を作るか」より「誰と組むか」
自前主義にこだわらず、最強のプラットフォームを持つ相手と組む。 - 無形資産で勝つモデルへ
工場や在庫というリスクを抱えず、特許・ブランド・ソフトウェアといった知財で稼ぐ。 - ブランドの寿命を延ばす決断力
事業が衰退する前に、最も輝いている段階で構造を変えるスピード感。
現在のソニーは、エンタメ(映画・音楽・ゲーム)、金融、イメージセンサーといった高収益領域へ完全に軸足を移しています。
まとめ:形を変えて生き残る「BRAVIA」
2027年以降、店頭に並ぶBRAVIAの中身は、これまで以上にTCL製に近いものになるかもしれません。
しかし、そこにソニーの画質哲学が宿り続ける限り、ブランドは死にません。
「過去の成功体験を捨て、未来の生存確率を上げる」。
ソニーのこの大胆な決断は、変化の激しい時代を生きる私たち自身のキャリア戦略にも、大きな示唆を与えてくれます。

